ブーランジェとは、フランス語で「パン職人」を意味する言葉です。その仕事は多岐にわたり、単にパンを焼くことだけがブーランジェの役割ではありません。今回は、意外と知られていないブーランジェの業務内容をご紹介します。
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パン職人の主な勤務先
パン職人の主な勤務先として、ベーカリーやレストラン・ホテル、工場などが挙げられます。そのほか、製パンメーカーで商品開発をおこなう人もいます。
将来的に独立開業を目指す人、パン作りに深く関わりたい人は、個人店で働くのがおすすめです。ここでは、パン職人の代表的な勤務先の特徴をご紹介します。
ベーカリー
ベーカリーは、多くのパン職人が働く勤務先です。材料の配合から仕込み、成形、焼成を含む製パンが主な仕事です。さらにパンの陳列や接客、清掃など、幅広い業務を担います。現場での役職によっては、新商品の研究・開発など、重要な仕事も任されるでしょう。
レストラン・カフェ
レストラン・カフェで働くブーランジェは、製パンが主な仕事になります。特に高級レストランでは、ベーカリー専門のスタッフとして、パン職人を雇うことが多いです。
ホテル
ホテル内のレストランや宴会で提供するパン、ホテルショップで販売するパンの製造を担当します。規模の大きいホテルでは、生地担当やオーブン担当など、工程ごとにパン職人を配置することがあります。
工場
工場で働くパン職人の業務内容は、製パンが中心です。具体的には、材料の配合・仕込み・成形・焼成などの工程を経て、さまざまなパンを大量生産します。
現在は、製パン工場におけるほとんどの工程が機械化されており、専門知識・スキルがなくても働けます。ただ、製パンの基礎を身につけている人は、対応できる業務範囲が広くなるため、就職・転職活動で有利になるでしょう。
食品メーカー
食品メーカーで働くパン職人の仕事は、商品開発が中心です。新しいパン製品のアイデアを考案したり、試作品を作成したりして、商品化を目指します。食品メーカーの場合、ベーカリーレストラン・カフェなどの現場とは求められる知識・スキルが違います。どちらかというと、研究職に近い業務といえるでしょう。
パン職人の1日のスケジュール
ベーカリーで働くパン職人は、以下の流れで仕事に取り組みます。
- 店に出勤し、当日販売分のパンの仕込みを始める
- 焼き上がったパンから陳列し、開店準備を進める
- ランチタイムに合わせて新しいパンを焼く
- 販売と接客
- 随時パンを補充・陳列する
- 店内の混み具合をみて、交代で休憩を取る
- 帰宅ラッシュに合わせてパンを焼成・陳列する
上記はあくまでも一例であり、参考程度に留めましょう。
パン職人の主な業務内容
上記の通り、パン職人の業務内容は製パン・商品陳列・接客・開店(閉店)準備・商品開発・店舗経営にわかれます。ここでは、各業務の特徴や内容について、詳しく解説します。
製パン
製パンとは、パンを製造する一連の工程を意味します。製パンは複数の工程にわかれますが、とりわけ重要なのが材料の配合と仕込み、そして焼成です。
材料の計量・配合
まずはパンの材料の計量・配合から始めます。パン生地は、バター・卵・砂糖・塩・水・パン酵母などの材料を適切な分量で混ぜ合わせて作ります。ここで重要なのは、材料をできるだけ正確に計量することです。
「パン作りは化学」といわれ、些細な違いが味わいや仕上がりに影響を与えます。毎回、焼き上げるパンの品質を維持するため、小麦粉などの分量、水や牛乳の温度を適切に調整します。
攪拌・捏ねる
小麦粉と水を攪拌(かくはん)して捏ねることで、生地内にグルテンが形成されます。グルテンとはいわば、パンを構成する「骨組み」のようなものです。グルテンにガスが溜まることで膨らみ、ふわっとした食感になります。
発酵
発酵は、製パンにおける重要な工程です。発酵が適切に行われなければ、パンがうまく膨らまなかったり、食感が悪くなったりします。なお、ベテラン職人になると、その日の天候などを考慮し、発酵時間を微調整できるといいます。
焼成
製パンにおける焼成とは、生地をオーブンで熱し、パンの形状や食感、風味を仕上げる工程を指します。焼き加減を誤ると、パンの外側が焦げたり中が生焼けになったりするため調整が大変重要です。
焼成は、生地が最後の発酵を終えたあとに行います。焼成中には、パンの生地の内部で熱による化学反応が起こり、パンの食感や風味が形成されるのです。また、適切なオーブンの温度や焼成時間は、パンの種類や大きさにより調整します。
商品陳列
商品陳列は、焼き上がったパンを店頭に順次並べていく作業のことです。パンの陳列箇所は、そのときの人気商品をよく見える場所に配置することが多いため、センスが磨かれる仕事といえるでしょう。
ベーカリーでは、開店前と営業中に商品陳列をするのが一般的です。開店前は、たくさんのパンを焼き上げて陳列し、お客様をお迎えします。また、営業中は陳列棚を常にチェックし、その都度新しいパンを補充します。
接客
パン職人の仕事には、お客様に商品を説明したり、焼きたてパンを案内したりする接客業務が含まれます。さらにレジ業務や、パン・菓子などの包装作業も担います。
「パン職人は工房でパンを焼くのが仕事」というイメージがあるかもしれません。間違ってはいませんが、お客様とコミュニケーションを取り、パンの魅力を伝えることも、パン職人の大切な仕事です。
たとえば、パンには小麦や鶏卵、乳などの「特定原材料(特定原材料に準ずるもの)」が使用されます。これらは食物アレルギーの原因食物であり、小さな子どもを中心に、口にできないことがあります。そのため、パン職人が各商品のアレルギー情報を説明できれば、お客様は安心して購入できるのです。
開店(閉店)準備
店内清掃や厨房器具の準備、レジ締めなど、ベーカリーの開店・閉店準備を行います。いずれも店舗経営に欠かせない業務です。また、食品ロス削減の観点から、売れ残ったパンを二次加工し、再販するベーカリーも増えています。
たとえば、食パンをラスクやフレンチトーストするなど、付加価値を加えた上で再販し、利益確保と食品ロス削減を目指します。
商品開発
商品開発は、新商品のアイデアを考案し、市場に投入するまでの一連の業務を意味します。まずは市場調査を行い、ターゲットとなるお客様のニーズや好みを分析しつつ、商品コンセプトを決めます。
続いて、レシピの開発や原材料の選択、製造方法の検討をおこない、試作品を作ります。試作品が完成したら、試食やフィードバックを通じて改善を進めます。商品が完成するまで、このサイクルを繰り返すのが一般的です。
店舗経営
ベーカリーのオーナーになると、店舗経営に関する業務も行います。具体的には、商品の品質管理や食品衛生管理、従業員の教育、勤怠管理、売上管理などの業務があります。また、複数店舗を担当し、経営のサポートを行う人もいます。
パン職人になるために
パン職人になるには、大きくわけて2つのルートがあります。基本は専門学校に入学し、製パンの基礎を学ぶのがおすすめです。ここでは、各ルートの特徴を解説します。
専門学校で基礎を学ぶ
製パン科などがある専門学校に進学し、パン作りを1から学びます。本気でパン職人を目指すなら、本ルート一択といえるでしょう。
理由はさまざまですが、一番は在学中に実践的なスキルが身につくことです。後述する独学のルートに対し、スタートで差がつきます。
独学で製パンを学ぶ
ベーカリーなどでアルバイトしながら、パン職人を目指すルートです。店舗のオーナーに師事し、製パンを独学します。働きながら知識・スキルを磨けるため、社会人に選ばれるルートといえます。ただ、この場合は、働きながら学べる職場を見つけるのが大変であり、資格取得で不利になる可能性があります。
たとえば、パン製造技能士などの国家資格には、「実務経験○年以上」などの受験資格が設けられています。店舗で数年間は働かなければ、そもそも試験を受けられない決まりです。
しかし、専門学校に進学した場合は、実務経験の条件が免除され、卒業時に受験資格を得られる学校もあり、働きながら独学するルートよりも、早く資格を取得できるメリットがあります。
まとめ
これからパン職人を目指すなら、基本的な業務内容や勤務先を把握しておきましょう。その上で、専門学校への進学も検討してください。
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