ヨーロッパのお菓子の一つ、《ドイツ菓子》はウイーン菓子やフランス菓子と同じルーツを持っています。ドイツにも歴史あるさまざまな菓子が残されています。日本と違いヨーロッパ各国は地続きで、国境付近の地域では時代によって国が変わることもありました。ドイツにとってフランス、スイス、オーストリア、オランダ、デンマークは隣国であり、イギリスとスペインは同じルーツをもつため、菓子も相互に強く影響しあってきました。
ドイツ菓子で皆さんが良く知っているのは「バウムクーヘン」や「シュトーレン」でしょうか。色彩豊かで華やかなイメージのフランス菓子に比べて、ドイツ菓子は素朴なお菓子というイメージがあるかと思います。とはいえドイツ菓子でも華やかなものもありますし、なにより素材にこだわっているお菓子が多いのかな、という印象が私にはあります。
というわけで今回は質実剛健ドイツ菓子より3製品の授業です。
まずは一般的にはそれほど知名度は無いかもしれませんが、パティシエ的には知名度の高いケーキ。「シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ」から。
「黒い森のサクランボのケーキ」という意味のこのケーキ。シュヴァルツヴァルトというドイツの西南部の広大な森林丘陵の地域で、そこに生い茂る濃緑色のモミの木が黒々と大波のように覆いつくしているところから「黒い森」と呼ばれており、それをケーキの仕上げとしてチョコレート飾りでイメージ化したことが、このお菓子の由来となりました。
なので、フランス菓子店では「フォレノワール」という名前で売られています。フランス語でフォレは森、ノワールは黒。つまり「黒い森」という意味です。
またこの地方ではチェリーが採れ、その特産物として良質のキルシュヴァッサー(サクランボのブランデー)が作られており、この2つの特産物によりこのケーキが出来ました。
間に挟むチェリーを仕込みます。
チェリーのシロップを小麦粉デンプンを使ってとろみをつけていきます。
ドイツ菓子はコーンスターチよりも小麦粉デンプンを使う印象があります。
このフィリングを、ココア風味のスポンジ生地の上にキルシュ風味のクリームをリング状に絞った間に詰めていきます。
サンドし終わったら、ナッペしていきます。
先生が真横にいて、さらに教卓で全員が見てる中でのナッペ・・・。緊張する状況ですが、遠目からは上手くナッペ出来ているように見えます。 遠目からは・・・
キレイにカットして
最後にチョコレートコポーを乗せて完成です。
次はちょいと渋めのお菓子「フランクフルター・クランツ」です。名前からもわかるように、フランクフルトで生まれたお菓子です。王冠の形に似せた形で、リング状の型で生地を焼き上げ、ラム酒の効いたバタークリームでサンドとナッペをして、クロカント(ナッツのキャラメルがけ)を全体に付けて仕上げたお菓子です。
リング状の型で生地を焼いています。
クロカントを刻んでいます。
その横でスポンジをカットし、ラム酒風味のシロップをうっています。
このケーキもリング状にバタークリームを絞り、その間にフランボワーズジャムを絞ってサンドします。
全体をバタークリームでナッペしたら細かく刻んだクロカントを表面に付けていきます。
上にチェリーを飾り付け
その断面がこちら
全体はこちら
しっとりとカリカリのコントラストが楽しいお菓子です。
そして最後は「アップフェルクーヘン」!
出た! 「ザ・素朴」!! まさにドイツ菓子!!!
イギリスにはアップルケーキというものがありますが、これはドイツ菓子ゆえにスパイスやナッツも入り、より味わい深いのお菓子です。今回スパイスはシナモン、ナッツはヘーゼルナッツとアーモンドが加わっています。
まずサブレ生地(ドイツ語ではミュルプ・タイク)を型にフォンサージュしていきます。 フォンサージュとは型の側面と底に生地をぴったりと敷く作業のことです。
そこに、これでもかっ!てくらいにフィリングを乗せて・・・いや詰め込んでいきます。
てんこ盛り盛り盛りです
その表面にカスタードクリームを塗り
スライスアーモンドをまぶしていきます。
そしてオーブンへ
焼きあがったら粉糖をかけて仕上げます。
さあ、3製品完成しました!
シュヴァルツヴェルダーキルシュトルテ
フランクフルタークランツ
アップフェルクーヘン
どれも派手さは無いけれど、味わい深いお菓子で私はどれも大好きです。スパイスをよく使うのもドイツ菓子の特徴の一つですね。
ドイツ菓子オーストリア菓子のお店もありますので、もし見かけたらぜひ食べてみてくださいね。
toru